研究概要
本拠点では、広汎な社会的課題の解決に重要な摩擦現象を、機会、材料、計測、シミュレーションなどを融合したアプローチにより科学的に解明し、設計・制御する新しい学術領域を創生するとともに、得られた知見に基づきトライボロジー技術を革新し、2050年に向けた低炭素化社会、ならびに、安心・安全な社会の実現に貢献します。
さらに、これらの研究を進めることで得た、トライボロジー研究の先端的研究基盤(装置、研究知見など)を活用して、地域の産業を支援する活動を行い、東北地区を中心とした地域創生に貢献します。
摩擦研究による社会貢献 自動車におけるガソリン消費量の低減は省エネルギーに重要 自動車のエネルギー損失 温室効果ガスインベントリ オフィス(2014) 摩擦は身近なところにある。 摩擦によるエネルギー損失:約30% 鈴木厚、月刊トライボロジー 5 (2012) p. 61. いままでの低摩擦技術(燃費向上:0.75%/年) マクロスケールの特性評価の積み重ねによる開発 目標 しかし, 複雑ゆえに理解されていない 「ナノ界面層研究に基づくボトムアップ型低摩擦システム設計」 へのパラダイムシフト 「摩擦を科学する」学問技術領域(トライボロジー)による経済効果: 機械の性能劣化、損傷、寿命の原因: 75%が表面・接触面に由来 GDPの2%程度* 摩擦や摩耗の制御 1.機械システムのエネルギー効率向上(省資源・省エネルギーに貢献) 2.長寿命 高信頼 高品質保証(保守作業の軽減、安心・安全な社会に貢献) *化学技術戦略機構の委託調査報告 「ST/GSC技術開発プログラム構想-ST戦略の具体化に向けて-」(2002)
設計グループ
低摩擦発現ナノ界面形成機構解明と最適化設計 In-situ摩擦・摩耗解析プラットホームの開発 低摩擦発現ナノ界面形成及びその形成機構解析のための表面テクスチャの開発 なじみ現象を解明し低摩擦を設計していく 摩擦面その場観察用XPS装置の製作(設計G) 世界ではじめて「摩擦面その場観察用XPS装置」を構築 硬X線源の共同開発と3種類の光源による同一箇所分析 (a) VUV source Au-Valence bond (b) Al X-ray(1486 eV) Au-4f (c) Cr X-ray(5410 eV) Au-3d5/2 電子の平均自由行程の圧力依存性 3種類の光源による分析を実証(位置制御) 摩擦に伴う摩耗面の変化をリアルタイムで観測 なじみ過程を理解し低摩擦を設計する 固体潤滑(金,PTFE)のXPS測定デー
計測グループ
・共振ずり測定装置(独自開発) ・和周波発生振動分光装置 摩擦条件下における潤滑油・添加剤の作用を基材の表面特性も含め分子レベルで解明する手法の開発、標準化 (測定装置ならびに解析手法) ツインパス型表面力測定装置 ・ナノ共振ずり測定装置 和周波発生振動分光装置 (SFG) 基材・潤滑油・添加剤の作用の解明 例えば、 実効粘度によるストライベック曲線の再評価 ストライベック曲線 摩擦係数 実効粘度を 反映 摩擦 係数 添加剤の存在状態の評価など 超低摩擦を発現する 粘度(バルク)・速度/荷重 実効粘度・速度/荷重 基材・潤滑油・添加剤の最適化 超低摩擦を発現する界面・潤滑油の最適設計 ナノトライボロジー解析基盤の構築 低摩擦を発現する潤滑油・添加剤の最適設計(計測G) 基盤技術:共振ずり測定法 静電容量変位計 → バネ変位 液体分子 D FECO 表面間距離 D バネ 正弦波形電圧 正弦振動 周波数 装置の共振ピークを測定し、 ピークの振幅, 周波数から液体の 特性、摩擦を高感度評価 ・ ピーク低下→粘度増大 ・ ピークシフト→摩擦により力伝達 共振ずり測定の高度化 ・モデル解析高度化, 摩擦力評価 ・精密温度制御デバイスの開発 独自開発の精密温度制御機構 白色光 2つの表面間に閉じ込められた液体の構造化挙動、 摩擦特性を、表面間距離μmから接触まで連続的に評価 (室温 100℃) (特願2013-212951) 境界潤滑モデルの検証 界面活性剤添加剤の吸着構造モデルの実証・ ナノ計測に基づく新規境界潤滑モデルの提出 更新 Bowden-Tabor境界潤滑モデル (1951) J.Watanabe, M.Mizukami, K.Kurihara, Tribol. Lett. 56, 501-508 (2014) Bowden-Tabor境界潤滑モデル ナノ厚み実効粘度 MADE フェニルエーテル系潤滑油 バルク粘度 m-5P4E 固 体 膜 バルク 高分子系添加剤の開発 (特願2015-097708) DADE m-4P2E 接触 接触 摩擦評価 (ナノ計測) m-4P2E m-5P4E DADE MADE 固体・膜接触部の摩擦のみ考慮 A:カルボン酸 S:長鎖アルキル基 構造を最適化(PAOを溶媒) 低摩擦を実現 フェニルエーテル系潤滑油粘度の表面間距離依存性 ナノ厚みの潤滑油は残り、数桁の粘度増大 固体触接 膜接触 油粘度増大 バルク S. Yamada, A. Fujihara, S. Yusa, T. Tanabe, K. Kurihara, Langmuir 31 (2015) p. 12140. S. Yamada, K. Inomata, E. Kobayashi, T. Tanabe, K. Kurihara, Tribol. Lett. 64 (2016) p. 23 ナノ厚み粘度はバルクと大小が逆転 → 新しい境界潤滑モデルが必要 粘度の油膜厚み依存性 →油膜部の摩擦の理解・設計
計算グループ
トライボ化学反応シミュレータの開発 計算科学による理論的な摩擦界面の設計基盤の構築